グラフィックデザイナーのブログ
ミュージックビジネスとデザイン②

2020年10月6日BEATLES

前回に触れた‪ポール・マッカートニー‬の
アーカイブコレクション。

この様なカタログ作品をリマスターした高額なパッケージが売れる背景には、最新のデジタル技術で蘇ったクリアなサウンドと共に、未発表音源を収録した特典ディスクの存在価値が挙げられる。未発表音源を収録したCDやレコードは一般にブートレッグと言われる非正規商品であり、古くは海賊盤と呼ばれていた。いわゆるアーティストやレコード会社が未公認の商品である。これらの殆どは通常なら世に出ない流出音源であり、コンサート会場の隠し録り、あるいはスタジオ録音のアウトテイク等が収録されたモノである。ブートレッグはビートルズの様な世界的なアーティストだけに存在するモノで日本でも1970年ごろからレコードショップに流れて堂々と販売されていた。ボクも高校生の頃、音楽雑誌などで知っていて、店頭で初めて見た時は思わず買ってしまったものだ。ブートレッグの特徴は、市販の商品には収録されていない珍しい音源であること。そして通常のアルバムよりも高価でありながら、極めて音質が悪い事だ。またアナログレコードの場合、白いジャケットに1色印刷のペラ紙が添えられただけのみすぼらしいモノだった。何せ非合法な商品なので音質は聴いてみないと分からない。しかし今まで聴いたことがない音源なのでマニアは思わず買ってしまう。当時はブートレッグの紹介本も出始めの頃で、ボクもアナログレコードを何枚も購入したが、残念ながら一枚として満足な音質の商品に当たったことが無かった。ボクにとってのブートレッグはヒスノイズだらけの粗悪品=購入価値がゼロに近い印象だ。しかしその後ブートレッグは格段の進歩を遂げる。ジャケットはカラー印刷になり、音質も改善されて市販のモノと見間違える程のクオリティになる。1990年代になるとフォーマットもCDの商品が現れる様になった。最近のブートレッグは更に進化。外見、音質共に正規商品と見間違える程のクオリティになっており、今もブートレッグは店頭やネットで多数の商品が堂々と販売されている。むろん非合法商品なので、アーティストやレコード会社には一切お金が落ちない。そこでこれを何とかしようと考え、この企画を逆手に取り未発表音源を収録した正規品の発売が計画された。これを実現したのが、‪ビートルズ‬のアンソロジープロジェクトで企画された3枚のアルバムである。

アルバム、アンソロジーの3部作はブートレッグを逆手に取った
未発表音源の正規品と言う斬新な商品企画。

アンソロジープロジェクトは、ビートルズの解散後に企画された、アルバム、ドキュメンタリービデオ、ドキュメンタリーブックの3部作で構成されており、元ビートルズのメンバーが協力して完成させたものである。中でもアルバムに収録された「フリー・アズ・バード」と「リアル・ラヴ」の2曲は今は亡きジョン・レノンが作曲した未発表曲を残りの3人が仕上げる形でビートルズの新曲として完成させたものである。この2曲に加えて150を超える未発表音源が収録されたコンピレーションアルバムで1995年に発売された。
アルバムは発売と同時に、大きな反響を呼び、世界中のファンから驚きと歓喜の声が上がった。未発表音源には、バージョン違いやデモ等のレアテイクが多数含まれ、中には演奏が崩れて途中で終わってしまう様な、曲とは呼べないテイクも収録された。これについて当時、この様なモノを発売する事が許されるのかという意見も一部に出たが、結論を言うと許される。ビートルズの様な世界的なアーティストの未発表音源は、記録と言う意味でも大きな価値がある。アルバムアンソロジー3部作は海賊版対策で企画されたものだが、商品として大きな需要がある事も証明された。ビートルズのオリジナルアルバムしか聞いたことのない方には、一度聴くことをお勧めする。

アルバム「アンソロジー」3部作のジャケットデザインは、
ビートルズが活躍した様々な時代をコラージュで表現した印象的で興味深いデザイン。

アルバムアンソロジーのデザインコンセプトはビートルズの様々なシーンがコラージュで表現されている。この背景には、どもそもビートルズが活躍した時代の映像素材はアナログ全盛期であり、そのまま使用すると著しく見劣りしてしまう。その為、CGを駆使したコラージュ表現を活用することにより、ビートルズの豊かな音楽性、また当時の文化や時代背景等を現代のクオリティに近い状態で再現する事ができる上に、更に新しい魅力を加えることができる手法であると言えるだろう。
これらのコラージュ表現は、アンソロジープロジェクト以降、ビートルズのカタログ作品リイシューのプロモーションにおいて、,ビデオクリップ等で引続き活用されている。

アルバム「アンソロジー」のジャケットデザインを担当したのは、
ビートルズのアルバム「リボルバー」のデザインを手がけたクラウス・フォアマン。

アルバムアンソロジー3部作のジャケットデザインを担当したのは、かつてビートルズのアルバム「リボルバー」のジャケットを手がけたドイツ人のクラウス・フォアマン。彼はミュージシャンであり、グラフィックデザイナーでもある。アンソロジープロジェクトではアルバムの他に、ビデオ、本のデザインも担当している。
ノスタルジックな色合いで若き日のビートルズがコラージュされたアンソロジー1
ツアーからレコーディング活動に移行した中期のビートルズがコラージュされたアンソロジー2のジャケットデザイン。
メンバー夫々の音楽性が大きく開花していく円熟期のビートルズがコラージュされたアンソロジー3のジャケットデザイン。
上記の様な観点で見ると、ひとつひとつの画像パーツが様々な事象を意味している事が分かる大変興味深いデザイン。中でもアンソロジー3は、当時のビートルズ4人の人間関係を暗示している様なデザインだ。

禁断のブートレッグコレクション
ビートルズ関連のブートレッグは現在まで実に様々なモノが販売されている。
それらの詳細な説明は世界中のファンサイトに掲載されているのでそちらに任せ、
今回は、デザイン的な観点から秀逸だと思うブートレッグを紹介したい。

☆THE REAL ALTERNATE ALBUMシリーズ
アナログLPとCDをセットにしたボックスセット。500セット限定生産。
ジャケットは、ボックスに3Dホログラム画像のシートを直張り。大判の解説書が付属。

このシリーズは発売時から人気があったが、残念ながらカラーレコードの盤質が極めて悪い。更に付属のCDがボックスの中に貼り付けてあり、購入後剥がして保存しないと後に悲惨なことになる。

この商品に刺激されたワケでは無いと思うが、ホログラム付きのボックス形態は、後に発売された公式商品サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブバンド50周年記念盤でも採用されている。
アナログLPはカラーの重量盤プレスで、他にLPと同内容を収録した3枚のCDが付属する。
ディスクのカラーは各々レッドとブルーの2種があった。

ボックス表面
THE REAL ALTERNATE ALBUM
SGT PEPERS LONELY HEART CLUB BAND
ボックス裏面
LPはレッド又はブルーカラーレコード
見開きのジャケットが付属
ボックス表面

THE REAL ALTERNATE ALBUM
LET IT BE

ボックス裏面
LPはレッド又はブルーカラーレコード
見開きのジャケットが付属
ボックス表面

THE REAL ALTERNATE ALBUM
ABBEY ROAD

ボックス裏面
LPはレッド又はブルーカラーレコード
見開きのジャケットが付属

THE BEATLES AS NATURE INTENDED 3 CD BOX 1994年発売、(完売)

中古品の実売価格15,800円〜16,800円
紙ジャケット付きの3CDをボックスに収納したもの。500セット限定生産。
ボックスの画像はビートルズのベストアルバム通称青盤をコピーしたもの。
CDの他に、アルバムLET IT BEの発売時に付属していた写真集
通称GET BACK BOOKを縮小コピーしたブックレット付き、
加えて横尾忠則が制作したポスターのミニ版も付属している。
この商品は大人気で発売後直ぐに完売した。ボクはこの商品を
長らく入手できなかったが近年になってコンディションが抜群に
良い中古品を入手している。収録内容は、
アルバムLET IT BE~ABBEY ROAD至るまでの未発表音源で、
音質も極めて良い。

美しいデザインが魅力の
BFB DELUXE EDITION シリーズ

BFB DELUXE EDITION シリーズ
ビートルズや解散後にリリースされたソロ作品の未発表音源やDVDを珍しいタテ型デジパックに収納したシリーズ。500セット限定生産、欧州製。シリアルナンバー入り。各商品とも10ページ前後のブックレットが付属。ジャケットはコーティングされている。この商品は何よりもパッケージデザインの美しさに惚れて購入したもので、今まで入手できる限りの作品を購入してきたが、残念ながら現状ほとんどの商品が廃盤になっている。
左: THE END OF THE LONG AND WINDING ROAD(4DVD)
右: ANTHOLOPOLOGY(4CD)
左: ABBEY ROAD RECORDING SESSION(4CD)
右: THE BEATLES AT THE HOLLYWOOD BOWL(3CD/1DVD)
左: RED ROSE SPEED WAY Recording Sessiobs Reconstructed(4CD)
右: One Hand Clapping(3CD/1DVD)
左: PAUL & LINDA McCartney’s FANKY PERIOD 1969-1971(4CD)
右: FROWERS IN THE DIRT SESSIONS(3CD/1DVD)
左: COMPLETE PIPES OF PIECE 1983(4CD)
右: THE COMPLETE BACK TO THE EGG SESSIONS(4CD
左: WATER WINGS (4CD)
右: THE COMPLETE PRESS TO PLAY(3CD/1DVD)
左:VIVA MACCA_MEXICO CITY 2010(3CD/1DVD)
右:THE LIGHT THAT HAS LIGHTED THE WORLD(3CD/1DVD)

近年購入したブートレッグの一部。

☆ビートルズ関係のブートレッグ
☆ポール・マッカートニー関係のブートレッグ

ビートルズ関係の1番のお気に入りは「In A Play Anyway」
ポール関連のお気に入りは「macca mixes- pre show music」

☆In A Play Anyway

来年レストア版がリリース予定のビートルズ最後のドキュメンタリー映画。
「LET IT BE」の完全サウンドトラックCD。
オープニングからラストのルーフトップコンサートまでの全てが収録されたブートレッグ。
高校生の頃、このブートを探し求めてレコードショップを歩き回った思い出がある。
大人になってネットでCD版を見つけた時に即購入した。音質は極めて良い。
ビートルズファンなら何回聴いても飽きないオススメの1枚

☆macca mixes-pre show music

ポールマッカートニーのコンサートでオープニングDJを務めるクリス・ホームズの2013年のDJセット。ボクは米国のショップから購入したが、ネットでも公開されている。

DJセットとは、ビートルズやポールの楽曲(本人だけで無く、他のアーティストがカバーしたものも含む)を使ってエンドレスミュージックに仕立てたものでコンサートの開演前に流して
観客の気分を高める為のもの。
CDと同内容のセットがネットでも公開されている。
https://soundcloud.com/djchrisholmes/chris-holmes-beatles-paul
コチラは映像付き
https://vimeo.com/237187854

アビイ・ロード50周年記念盤/スーパーデラックスエディション

アビイ・ロード50周年記念盤の発売が決定。

予想通りアビイ・ロード50周年記念盤の発売がビートルズの公式サイトで発表された。
☆ビートルズアビイ・ロード50周年記念盤 2019年9月27日発売。
スーパーデラックスエディション3CD+Blu-ray+100ページの豪華本が付属。13,824円
以外に安い価格設定で安心。これは絶対2セット買う。

☆ビートルズアビイ・ロード50周年記念盤プロモーション映像http://amass.jp/124134/

2020年10月6日BEATLES