店は消えるがこころは残る。
41年の想いを抱きしめて。 

2021年9月18日

ケロヨンFの自宅近くにあるイトーヨーカドー刈谷店がまもなく閉店する。店舗は残るが装いも新たにイオンになるそうだ。私にとって刈谷店は特別な存在であり、不思議な縁を感じる店だった。私が東京を離れて名古屋に戻り、初めて勤めたデザイン会社が刈谷店の仕事を請け負っていたのだ。その時に私が担当した仕事は、刈谷店のテナントである本屋さんのロゴタイプデザインであった。その仕事を機に、何度も店を訪れた記憶がある。そしてこれもまた偶然なのだが、刈谷店近くに自宅があるケロヨンFと後に巡り会うことになるのだ。そのような経緯もあり、ケロヨンと共に刈谷に来ると、この店で買い物をする事が多々あった。

私が暮らす愛知県の量販店はユニー系列のアピタ/ピアゴに加えてイオンの集客力が高いという印象がある。だが私に言わせれば、アピタやピアゴの品揃えはどの店も殆ど同じで面白みがなく、貧乏くさいイメージが付き纏う。イオンは新しいものを積極的に取り入れていこうという意気込みが感じられる。イトーヨーカドーは関東圏の量販店であり、愛知県の閉鎖的な市場を変えてくれるだろうと最も期待していたのだ。だがケロヨンから閉店の話を聞いた際、だめだったかというのが正直な感想。ここ数年で店舗の老朽化が進み、テナントは退去する一方だった。売り場の一角が壁で仕切られてマッサージ店に変わった時は唯々驚いた。このような状況が続くのであれば、いずれ閉店するのではないかと誰もが感じていただろう。中規模店であったが品揃えは豊富。他店に見劣りすることはなかった。店を訪れると従業員の女性が「いらっしゃいませ」いつも声をかけてくれた事が強く印象に残っている。当たり前の事なのだが、これができない店は多い。客が目の前にいても挨拶すらせず、平気な顔で品出しをする不心得な従業員が多い。昨今はコロナの影響だろうか。集客力は軒並み落ち、打つ手がないように感じられたのも事実。閉店は時間の問題だったのかもしれない。

今日は久しぶりに刈谷店を訪れた。店内の一角にはお客様がお別れの言葉を残すメッセージボードが設置されていた。「やめないでください」「ありがとう♡」「閉店反対!」「何かの間違いであってほしい」「小さい頃からの思い出の場所がなくなるのは寂しい」想い想いのメッセージを見ると胸が詰まる。近隣住民に愛されていたのだろう。だが現実はいつも残酷だ。店舗の繁栄と消滅は背中合わせの紙一重。それを繰り返すのが街の宿命でもある。お客様のメッセージを見て、店が消滅する切なさと共に温かい心遣いを感じる事ができた。

昭和以降は大規模量販店が多数出現。閉店や廃業に追い込まれた小売店は多い。私はその頃から東京で働いており、栄枯盛衰を実感してきた。そして平成以降はコンビニが乱立して飽和状態。今や大規模量販店が閉店に追い込まれるという皮肉な図式に変わりつつある。刈谷店の閉店は極めて残念だがそれは仕方のない事。だが店は消滅しても、人の想いや心は消えない。思い起こせば数年前に刈谷店を訪れた時の事。食品売り場に活気を作ろうと、店員さんが鐘を鳴らしながらワゴンを引いてタイムセールを行っていた事を昨日の事のように思い出す。クラシックなスタイルだが、店員さんの直向きな心を感じていた。あの頃はこんな結末を迎えるとは予想もしなかった。私だけではない。この店を訪れる全てのお客様も同様であろう。刈谷店の閉店は9月5日。41年の歴史に幕を下ろす。直前にもう一度訪れて感謝の気持ちを伝えたい。

☆Free As A Bird/THE BEATLES
https://www.youtube.com/watch?v=6cDHvw8fn2c

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