怪しい自販機カタログ。
2021年11月27日
一昔前はタバコと缶入り飲料ぐらいしかなかった自動販売機だが、昨今は高機能でおしゃれな自販機が稼働している。またコロナ禍により、対面せずに販売できると設置需要が伸びていると聞く。そこで今回は、巷の自販機について考察してみたい。
私が幼少期の頃、ドリンクの自販機はガラス瓶を用いた商品が主流だった。大きな病院の待合室やボウリング場などに設置されていたコーラやファンタなど。大型自販機のドリンクは全てガラス瓶だった。コインを入れてボタンを押すと、大きな音を立てて出てきた。ドン!ガラガラ〜ズドーン!割れてしまうのではないかと思うほどの大きな音を立てて出てきた。当時のコカコーラの自販機は、現在と同様の赤色だったが、栓抜きが付いていた。メーカーの営業マンは、自販機にドリンクを補充するため、木製ケースに収容された瓶入りドリンクを営業車に乗せて運んでいた。実物を見た記憶も残っている。コカコーラを収容した木製ケースは濃い黄色だった。中学生になった頃、自販機のドリンク容器はガラス瓶から缶に変わった。出始めはスチール缶だったが後にアルミ缶に進化。その後のドリンクはペットボトルが主流になっていった。
高校時代。私が通っていた県立高校は自宅から遠く離れた場所に存在していた。毎朝自宅前のバス停から国鉄の駅まで乗車。そこから中央西線の電車に揺られて40分。電車を降りて徒歩で30分の場所に校舎はあった。夏はシラサギが水辺に集い、冬になると蛇の抜け殻が道端に落ちていた。所在地の住所こそ名古屋市だったが、イメージは真逆な場所だった。最寄り駅で下車して以降、校舎までの道のりは長く、田んぼの中を通らなければいけないあぜ道だった。しかも道幅が狭い上に大きく蛇行していた。まだコンビニがなかった時代。長い時間がかかる通学においては、毎朝すれ違うキレイなお姉さんを見られる事くらいしか楽しみがなかった。入学して数週間後のある日。あぜ道の途中に奇妙な自販機を見つけた。その自販機には、どこかで見たような名前のドリンクが入っていた。「リポタミンC」なんだコレ?クラスメートが自分に問いかけた「これってリポビタンの間違いじゃないかな」いや違う。間違いではなく、分かっていながら製造していた類似品だったのだ。所謂バッタモンである。リポビタンDに似せた商品名だったのだ。また他にもオロナミンCに似せたスタミロンCという商品もあった。冗談かと思う人がいるかもしれないが、全て事実である。当時は法律規制も緩くやったもの勝ちの時代。間違えて購入した人も多かったのではないだろうか。
あの頃から45年。実に様々な自販機が開発されてきた。高校時代に初めて見たエロ本の自販機。家の近くの商店横にひっそりと設置されていた。夜間になると照明が灯り怪しい光を放っていた。見た事も買った事もない自分には興味津々。家族に見つからないようにと、夜中にこっそり買いに行ったことがある。部屋に戻り本を読んだ時の言いようのない虚しさ。内容について、大凡の予想はしていたのだが、買わなければよかったと即刻ゴミ箱に捨てた。デザイン専門学校に入学した一年目の夏。親しい仲間が運転するクルマで尾瀬に連れていってくれた時の事。国道沿いに設置された天ぷらうどんの自販機を見つけて仲間と共に利用した。大きな黄色いボディの大型自販機。食べるまでは半信半疑だったが、しっかりした味付けの暖かいうどんに感激した。東京から名古屋に戻り、運転免許証を取得する際、自動車学校に設置されていたハンバーガーの自販機を見つけて利用した事もある。加熱された箱の中には、アツアツのハンバーガーが入っていて驚いた。意外にも美味しいと感じる味だった。今から数年前の事、大阪で見つけた出汁の自販機もあった。いずれの自販機も最初に見た時は驚くのだが、すぐに見慣れてしまうのが現実。最近では、坦々麺、つけ麺、麻婆豆腐など、調理済み食品の自販機も登場しているという。世の中が便利になるのは良いのだが、何もかも自販機で買える世の中になると思わぬ弊害が出る可能性も考えられる。ネット社会に慣れている私達の生活感。こんな時代だからこそ、他人との出会いを大切にしたいと考えている。さ、暖かいコーヒーでも飲んで寝るかな。