誰もが他人を幸せにする役目がある。 瀬戸内寂聴さん逝く。 2021年12月17日
ようやく涼しくなったと思っていたら、秋を通り過ぎて一気に冬が訪れた感がある。朝晩はめっきり寒くなり、一年を顧みるような気分になってくる。そしてこの時期になると、今年他界した有名人が報道されて元気な頃が忍ばれる。直近では田村正和さん、細木数子さん、瀬戸内寂聴さんである。とりわけ寂聴さんについては、愛に生きた波瀾万丈な人生が語り種になっている。そこで今回は、言葉と生き様について綴りたい。
今年亡くなった有名人の中で最も驚いた人は俳優の田村正和さんであろうか。享年77歳。俳優としても、まだまだ活躍できる年齢である。過去に大きな手術をされたと聞いていたが、なぜこんなにも早く逝ってしまうのかと感じてしまう。ただ過去の発言で、少し気になる部分もあった。それは2018年に放送された特別番組「眠狂四郎The Final」の番宣で「全然ダメですね」と語っていた事である。放映前にご自分の演技を見たご本人の発言である。この発言を聞いた時、プロとしての誇りを持ち続ける田村さんらしい言葉だと感じていた。だが問題はそこではない。発言をした直後の疲れ果てた表情である。スリムな田村さんが更に痩せているように感じた。何の世界であれ、プロは他人から言われる事なく、自ら引退の時期を見極めるという。この発言時の田村さんは正にその心境ではなかったか。番宣の中では「僕はもう俳優としてやり尽くしたんだ」そのような発言もされていた。道を極めた人だからこそ言える言葉だろう。あくまでも私見だが、田村さんといえば、眠狂四郎よりも古畑任三郎の印象が強い。独特なセリフの言い回しと大袈裟なポーズで大人気だった。晩年の田村さんの代表作と言ってよいだろう。因みに古畑任三郎は刑事コロンボにヒントを得て企画された作品である。最後まで主役であり続け、風のように去っていった田村さん。プロの塊のような役者さんであった。
細木数子さんは六占星術で名を馳せた人だが、過去のテレビ番組でも活躍した人である。スタジオに観覧者を入れて収録した番組「ズバリ言うわよ」である。この番組は細木さんの人気絶頂期に開始された番組であり、出演者の発言で物議を醸す事が度々あった。ある時の放送で女子高生をスタジオに招き、細木数子が悩み事相談にのりますという内容であった。一人の女子高生が自分の父親の話を持ち出した。「お父さんが臭くて困っています」彼女は父親の体臭や口臭を指摘したかったのだろうか。この発言に激怒したのが細木さんである。「お黙り!アンタね、自分の父親を臭いって。ふざけんじゃないよ。アンタはその臭いお父さんから生まれたのよ!」その声にスタジオの雰囲気が一変した。細木さんの発言は、世間から誤解されやすいものが多かった。だが発言内容は、どれも真っ当なものばかり。私自身は好感を抱いた事も多々あった。ただの口うるさい人ではなかった。愛があるからこそ怒る人であった。
最後は先日亡くなった瀬戸内寂聴(せとうち じゃくちょう)さんである。100歳を目前にして99歳で亡くなった寂聴さん。その事自体もいかにも寂聴さんらしい。また寂聴さんが残した数々の言葉には説得力があった。中でも私が最も感銘を受けた言葉が「人生には誰しも役目があります。それは他人を幸せにする事です」この言葉は誰もが人生の意義を噛み締めて、生きる気力を感じる言葉だろう。そして仏の道を知らない人でも、人間のあるべき姿を悟る事ができる。だからこそ、寂聴さんの講話は常に大人気で満員なのだろう。講話の映像をテレビで見たのだが、ご主人を亡くした女性が寂聴さんに相談を持ちかけていた。「若くして亡くなった主人の死を未だに受け入れられません」これを聞いた寂聴さんは女性を呼び寄せて抱きしめこう言った。「誰の目も気にしなくていいの。悲しい時は我慢せず、気の済むまで泣きなさい。でもね、泣き尽くしたら、少しでもいいから微笑みなさい」誰もがグッとくる言葉だ。人生の意義を語り、それを実践して見せてくれた寂聴さん。他人を幸せにするのも言葉、そして他人を不幸にするのも言葉なのである。
田村正和さん、細木数子さん、瀬戸内寂聴さん、心より哀悼の意を表します。
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2021年12月17日
ようやく涼しくなったと思っていたら、秋を通り過ぎて一気に冬が訪れた感がある。朝晩はめっきり寒くなり、一年を顧みるような気分になってくる。そしてこの時期になると、今年他界した有名人が報道されて元気な頃が忍ばれる。直近では田村正和さん、細木数子さん、瀬戸内寂聴さんである。とりわけ寂聴さんについては、愛に生きた波瀾万丈な人生が語り種になっている。そこで今回は、言葉と生き様について綴りたい。
今年亡くなった有名人の中で最も驚いた人は俳優の田村正和さんであろうか。享年77歳。俳優としても、まだまだ活躍できる年齢である。過去に大きな手術をされたと聞いていたが、なぜこんなにも早く逝ってしまうのかと感じてしまう。ただ過去の発言で、少し気になる部分もあった。それは2018年に放送された特別番組「眠狂四郎The Final」の番宣で「全然ダメですね」と語っていた事である。放映前にご自分の演技を見たご本人の発言である。この発言を聞いた時、プロとしての誇りを持ち続ける田村さんらしい言葉だと感じていた。だが問題はそこではない。発言をした直後の疲れ果てた表情である。スリムな田村さんが更に痩せているように感じた。何の世界であれ、プロは他人から言われる事なく、自ら引退の時期を見極めるという。この発言時の田村さんは正にその心境ではなかったか。番宣の中では「僕はもう俳優としてやり尽くしたんだ」そのような発言もされていた。道を極めた人だからこそ言える言葉だろう。あくまでも私見だが、田村さんといえば、眠狂四郎よりも古畑任三郎の印象が強い。独特なセリフの言い回しと大袈裟なポーズで大人気だった。晩年の田村さんの代表作と言ってよいだろう。因みに古畑任三郎は刑事コロンボにヒントを得て企画された作品である。最後まで主役であり続け、風のように去っていった田村さん。プロの塊のような役者さんであった。
細木数子さんは六占星術で名を馳せた人だが、過去のテレビ番組でも活躍した人である。スタジオに観覧者を入れて収録した番組「ズバリ言うわよ」である。この番組は細木さんの人気絶頂期に開始された番組であり、出演者の発言で物議を醸す事が度々あった。ある時の放送で女子高生をスタジオに招き、細木数子が悩み事相談にのりますという内容であった。一人の女子高生が自分の父親の話を持ち出した。「お父さんが臭くて困っています」彼女は父親の体臭や口臭を指摘したかったのだろうか。この発言に激怒したのが細木さんである。「お黙り!アンタね、自分の父親を臭いって。ふざけんじゃないよ。アンタはその臭いお父さんから生まれたのよ!」その声にスタジオの雰囲気が一変した。細木さんの発言は、世間から誤解されやすいものが多かった。だが発言内容は、どれも真っ当なものばかり。私自身は好感を抱いた事も多々あった。ただの口うるさい人ではなかった。愛があるからこそ怒る人であった。
最後は先日亡くなった瀬戸内寂聴(せとうち じゃくちょう)さんである。100歳を目前にして99歳で亡くなった寂聴さん。その事自体もいかにも寂聴さんらしい。また寂聴さんが残した数々の言葉には説得力があった。中でも私が最も感銘を受けた言葉が「人生には誰しも役目があります。それは他人を幸せにする事です」この言葉は誰もが人生の意義を噛み締めて、生きる気力を感じる言葉だろう。そして仏の道を知らない人でも、人間のあるべき姿を悟る事ができる。だからこそ、寂聴さんの講話は常に大人気で満員なのだろう。講話の映像をテレビで見たのだが、ご主人を亡くした女性が寂聴さんに相談を持ちかけていた。「若くして亡くなった主人の死を未だに受け入れられません」これを聞いた寂聴さんは女性を呼び寄せて抱きしめこう言った。「誰の目も気にしなくていいの。悲しい時は我慢せず、気の済むまで泣きなさい。でもね、泣き尽くしたら、少しでもいいから微笑みなさい」誰もがグッとくる言葉だ。人生の意義を語り、それを実践して見せてくれた寂聴さん。他人を幸せにするのも言葉、そして他人を不幸にするのも言葉なのである。
田村正和さん、細木数子さん、瀬戸内寂聴さん、心より哀悼の意を表します。