だめだこりゃ

2023年1月8日

先週のこと。部屋を片付けようと物を移動した際、不注意で障子を破いてしまった。自分としたことがと思ったが、あとの祭り。妻が苦労して一日がかりで張り替えてくれた障子だ。僅か一日で私が破いたと分かったら、烈火の如く怒るのは目に見えている。どう言い訳すれば良いのだろうと思っていたが、ここは笑いに変えてやろうと考えた。夕食時に自分から切り出した。「ご予約のお客様ですね。客室担当のひとみと申します。こちらをご覧ください。大変失礼ですが、破いたのはお客様ですか?」「!!」「ちょっと〜勘弁してよ。もう破いたの?」妻にとっては晴天の霹靂のようだった。普段ならこの時点で口論になるのだが、今回は展開が違った。互いの顔を見て笑い転げてしまった。私たちはドリフターズの全員集合世代。笑うことが大好きなのだ。妻と一緒に生きることを決めたのは、この子はよく笑う子だなぁと思ったからだ。笑いは人の心を豊かにする効能がある。妻と一緒になり33年目に突入。二人ともまだまだ若いと思っていたが、体力の衰えは著しい。気力だけでは生きていけない年齢になっている。既に老人の入り口に立っているのだ。

例年この時期になると、私が多忙で心に余裕がない時が多かった。そんな時は妻の何気ない一言で大喧嘩に発展する。正月にも関わらず、2週間ほど会話が途絶えた時期もある。だがそんな日々も、過去の思い出になりつつある。なぜならば、今年は二人で力を合わせて、対処すべき問題が控えている。「新しい景色」ならぬ、新しい住まいへ移り住むからだ。初めての引越しである。引越しは物を持ち込まないことに尽きる。そのためには捨てることが不可欠になる。物を捨てる気構えは簡単だ。感傷に浸ることなく、黙々と捨てるのみ。思い出に浸っていては捨てることを躊躇ってしまうからだ。だが物を見る度に、当時の思い出が蘇るのも事実だ。妻と暮らす新築マンションを父と一緒に探していたころ。会社経営を始めて深夜まで仕事に没頭していたころ。我が子同然に接していたジリスが亡くなり、何も手につかない状態のころ。かつての同僚が亡くなり彼女のことを回想していたころ。一瞬一瞬が鮮明な映像で記憶されている。いずれの思い出も、切ないものばかりだ。今の私たちが笑っていられるのは、悲しみを乗り越えてきたからだろう。

人生は悲しみと喜びが交互に訪れる。二人で30年という時間を一緒に過ごしてきた裏側には、多くの悲しみがあることを忘れてはいけない。感謝のこころを忘れずに一日一日を精一杯生きること。それが残された私たちの使命だ。素晴らしい一年になりますように。

family story,In My Life