名古屋特集①
奇々怪界の名古屋弁

2023年5月7日

先日地元ローカルのワイド番組を見ていたら、名古屋弁の生存率をテーマにしていた。番組では20種類の名古屋弁がセレクトされ、使い方や意味が紹介されていた。私は62歳だが、候補に上がった言葉の意味は全て知っている。だが現実に使用している言葉があるかといえばゼロである。見栄を張っているのではない。名古屋生まれで名古屋育ちの自分においても全てが死語になっているのだ。今回はゴールデンウィーク特別版。名古屋特集三部作で綴りたい。

まずは上の画像を見ていただきたい。黒い文字が名古屋弁のまんま。赤い文字が意味を表している。私自身が上京以前に使用していたものもある。“えらい”と“こわす”これに加えて“けった“”ときんときん”だろうか。えらいは疲れたと同意語。ときんときんは鉛筆を削った際に使う表現である。またこわすについては、都内のデザイン会社に就職して数日後。ドリンクを買いたいと財布の中を見たらお札しかなかった。そこで仕事仲間に一万円札をこわしてほしいと言ったら「それはどういう意味?」と通じなかった。その日以来私の中ではこわすは封印した。また一時期タモリが笑いのタネにしていたおみゃーなどは一度も使ったことがない。あくまでも推測だが、名古屋弁を使う人は皆無に近いと考える。

幼少期に祖母から聞いたのだが、汚いを意味する“ばっちい”という表現がある。またホコリだらけをホコリまるけという人もいる。更に面白いのは名古屋周辺においては、言葉が微妙に変化することもある。例えばおみゃーがおまはんに変化する。地区や世代によって変化するのが方言の面白いところだ。東京生活を終えて名古屋に戻り再就職した時のこと。社内のある人からこう言われた。「中川さんは器用だね。仕事の話を交わす時は標準語。でも仕事の話以外は名古屋弁になっているよ」当時はそんな使い分けをしようとは思わなかったが、他人は意外に見ているものだ。

東京を離れて名古屋に戻った頃、自分が通った小学校を訪れたことがある。たった6年間の東京生活だったが、小学校の周囲が激変しているのには驚いた。仲が良かった同級生の家はなくなっており、友人の親が経営していた店も消えていた。時の流れは無情にも大切な思い出を奪い取る。小さな店は軒並み閉店しており、人の流れが全く感じられなかった。聞くところによれば、付近に大型量販店が出店したため、小さな店は廃業せざるを得なかったという。自分が小学生の頃は付近に女子校があり、テニスボールをラケットで打ち返す音が響いていたのを思い出す。その後女子校は移転となり、学生客目当ての商店は次第に廃業したと聞く。栄枯盛衰。当時の記憶は鮮明に残っているのだが現実は切ない。

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