欲しがりません死ぬまでは

2023年11月19日

再びの引っ越しに備えて物の取捨選択を始めている。来年秋頃に実行するつもりだ。但し今回は賃貸住宅ではない。結婚以前に暮らしていた実家である。実家へ移り住むためには、前回以上に物を減らす必要がある。今回は物について綴ろう。

生活必需品を除き、私が大切にしてきた物は3種類。①ビートルズ関連のアーカイブコレクション。②鉄道模型。③スタートレックのフィギュアコレクション。勝手に三種の神器と名付けている。ビートルズは1960年代に活動したバンドのため、アナログ録音による作品がほとんどである。オリジナル音源にデジタルマスタリングを施した上で再構成した作品をアーカイブコレクションと称する。アルバム本作に加えてアウトテイクと呼ばれる未収録音源、ボーカルを取り除いた演奏だけのインストルメントなどが収録されている。要はアルバム制作の過程が分かるマニア向け集大成作品である。発売時の価格は2万円〜6万円ほど。だが全て限定数販売のため、完売品はフリマでしか入手できない。因みに私が所有している著名な商品の発売価格は57,000円であったが、発売直後に瞬殺で完売。現在はプレミアがつき、フリマの新品相場は13,0000円だという。

幼少期からの趣味である鉄道模型は二種類に大別される。1/80のHOゲージと1/150のNゲージである。HOゲージは高価だが、ずっしりした重みが感じられる世界的サイズ。一両の長さが約25cm。工作に適したサイズといえる。一方のNゲージは、狭い住宅事情がある日本で普及したサイズだ。一両の長さが約13cm。余りにも小さいため、工作には不向きといえる。幼少期はHOゲージだったが、成人以降はNゲージに変更した。これは金銭的事情によるところが大きい。車両については自分が生まれ育った時代に活躍したものが対象になっている。私自身はJRよりも私鉄志向である。近鉄の新ビスタカー。名鉄のパノラマカーなどである。鉄道模型の価格はピンキリだ。昨今はNゲージの4両編成で2万円が相場。HOゲージの場合、高価な物は軽く30万を超える。これは職人が手作業で仕上げているからだ。ここまで高価になると、流石に手を出せない。また市販されていない車両は自作するしかない。実をいえばこれが一番楽しいのだ。

そして結婚してから集め始めた物がスタートレックフィギュアである。ライトギミックやサウンドギミックが搭載された海外製の大型トイなどである。価格は15,000円ほど。だが昨今は円安が影響して値上がり傾向が強い。運良く入手できても20,000円を超えてしまう場合が殆どである。私自身は国内では購入しない。海外のオンラインストアで購入する場合が多い。なぜかといえば海外の方が在庫がある可能性が高いからだ。スタートレックの大型トイはアメリカ製。残念ながらクオリティーが高いとはいえない。日本製と海外製トイの違いは品質の差に尽きる。海外製は金型の精度が低いためディテールが甘い。一方の日本製は設計精度が高く、細部まで忠実に再現されている。面白いのがプラモデルだ。昨今の製品は接着剤を使用しなくても組み立てができるように仕上げられている。説明書に従って、はめ込むだけで完成するのだ。これらに加えて電飾が簡単に内蔵できること。これもプラモデルの魅力の一つになってきている。一番上の画像はスタートレックヴォイジャーの主役艦。「U.S.S.ヴォイジャー」である。窓から光が漏れる優雅な光景を眺めてブログを綴る。若い頃とは違う楽しみができるようになった。

三種の神器は高価な物ばかりで、おいそれと処分する気にはなれない。そこで自分自身でプライオリティーを付けて、低いものから順にフリマで売却している。売却対象は複数所有している物が大前提。これにも理由がある。どんな製品にも改良がある。従って快良型が発売されると購入しなければならない。もちろん買わなくても良いのだが、これは私の性分である。そのため複数所有という事態になるのだ。フリマにおいて高額商品は簡単には売れない。あくまでも一般論だが、人は二万円を超える商品は買い控える傾向が強い。気長に売れるのを待つ。これしかないだろう。自分がこの世を去る時には、三種の神器から1点づつ棺に入れて欲しいと妻に伝えている。但し妻からはこう返された。「不燃物は1点しか入れられないよ」

人は生活するために仕事をして稼ぎを得る。そして生活に余力がある場合は、好きな物事に対価を支払う。だが物をどれだけ集めても、全て墓場に持って行くことはできないのだ。ここ数年欲しい物を入手して、いつも感じていることがある。それは虚しさだ。日々生きていられること。それが何よりのはず。分かっていながら同じことを繰り返す自分に呆れることもある。だが物にはそれ自体の価値に加えて入手当時の想いが込められている。自分が体験したこと。また熱中していたこと。苦労したこと。物を通じて自分の人生を振り返る。むしろそちらの方が価値があるかもしれない。

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