清く正しく美しく
己に対して言えるのか

2024年1月21日

はじめに私に子供はいない。従って今回の記事を綴る資格はないかもしれない。ただ何かしらの不祥事が発覚した際、あまりにも粗末な会見を行う企業や団体が後を絶たない。そのため敢えて綴ることにした。ご容赦いただきたい。

阪急電鉄が運営する宝塚歌劇団の宙組(そらぐみ)に所属する女性(25)が死亡した。報道によれば、いじめやパワハラが原因の自殺と指摘されている。これについて宝塚歌劇団の記者会見が行われた。調査委員会が提示した報告書に基づく会見以来、ご遺族や友人達から批判の声が上がっている。問題視されているのは歌劇団とご遺族の見解が大きく食い違っていることだ。清く正しく美しくをモットーに、タカラジェンヌと親しまれている劇団員死亡の原因はどこにあったのだろうか。今回はこれについて綴ろう。

数日前に行われた記者会見。調査委員会が作成した報告書を元に木場理事長他二名が経過説明を行った。テレビで見た私の感想は、終始事務的な会見の印象。その理由は出席した三名の表情と発言内容に違和感を感じたからだ。木場理事長が哀悼の意を表明したものの、言葉数も少なく、原因を徹底追求する心意気が全く感じられないこと。また棒読みに近い報告書の内容説明。そしていじめの実態はなかったと結論づける性急な判断。更に木場理事長が早々と辞任を表明するなど、どう考えてもしっくりこない。木場理事長の辞任で幕引きを図ろうとする劇団の対応には嫌悪感すら覚える。辞めて済む問題ではない。未来ある若き劇団員が亡くなっているのだ。これで真実が解明されると予想された会見は期待外れに終わった。原因の一部だけを認めて逃げ切りを画策する心ない対応。到底納得できるものではない。寧ろ不信感が増すばかりだ。ご遺族の心中察するに余りある。この結果、宝塚歌劇団を運営する阪急電鉄への風当たりも極めて強くなってきている。

企業や学校など、昨今の不祥事においての記者会見は軒並み不合格なものばかりである。先立って発覚した日本大学アメリカンフットボール部の大麻吸引事件。林真理子理事長と澤田副学長のお粗末な発言が問題視された。所詮お飾りと揶揄されたことに対してすぐさま反論した林理事長。元検事の自負心から事件発覚時の生ぬるい対応をした澤田副学長。どちらも短絡的で大差ない。大麻事件一連の対応については、隠蔽工作と言われても仕方がないだろう。またこのままでは、助成金がもらえないことに言及した林理事長の発言は世間の失笑を買った。要は日大自体がことの重大さを理解していないに等しい。また林理事長と澤田副学長の見解が対峙して、両者の意思疎通に問題があることも露呈した。これが日大の実態なのかと考えると、信頼の回復は極めて難しい。一方で私が敬意を表するのは第三者委員会が言及した見解である。林理事長をはじめに、学内関係者の責任は極めて重いと結論づけている。そして日大は大学の体をなしていないと断言した。これこそが第三者委員会設置の意義であり、重みのある見解といえよう。

過去に仕事で数回大阪を訪れていた。大阪にはキタとミナミと称する地区が存在する。キタと称する地区には阪急梅田駅がある。初めて駅のホームに立った印象は壮観だった。ピカピカに輝く阪急電車がずらりと並ぶ美しい光景。企業に対する誇り。そして車両に対する愛情が満ち溢れていると感じたものだ。一時期は宝塚歌劇団をモチーフにしたラッピング車両も運行されていた。だが今回の件がきっかけになり、今まで築いた信頼が失墜するかもしれない。地元愛に満ち溢れた阪急電鉄には、今一度襟を正して真摯に対応いただきたい。人の命に勝る価値などありませんから。

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