なんでやねん!

2024年4月7日

昨年末発売の週刊文春で報じられたお笑い芸人松本人志さんの性加害疑惑。ネット上では様々な意見が飛び交っている。これについては私自身もニュースや動画を多数見ているが、現状は真偽不明。推測の域を出ないものばかりだ。今回はこれについて綴ろう。

はじめに本件を知らない方のために疑惑の概要を記述する。ことの発端は2015年に松本さんが都内高級ホテルのスイートルームで合コンを開催。後輩芸人が声をかけて集めた女性に対して「俺の子供を産めよ」と暴言を吐き、同意なく性行為を迫ったという疑惑。この報道が出た直後、松本さんが所属する吉本興業は完全否定。両者の主張が対峙した。その後松本さんが「事実無根なので闘います」とX(旧ツイッター)へ投稿。裁判による決着を示唆した。そして吉本興業から、松本さんが裁判に注力するために、芸能活動休止が発表された。更に年明けには週刊文春の続報で、被害女性が複数名いることが判明。これを受けて松本さんは、昨年三月までコメンテーターとして出演していたフジテレビの「ワイドナショー」へ出演しますと投稿された。またフジテレビも同番組へ松本さんが出演すると発表。ところがその後状況が一転。松本さんが「ワイドナショー」へ出演しないと発表した。直近の報道によれば、裁判は松本さん個人が対応するようで、吉本興業は関与しないとのこと。状況は日々変化している。

結論からいえば、本件は密室の出来事だ。従ってそれが事実なのかは、当事者以外分からない。仮に事実であれば、松本さんの芸能生命は終わる。強いては吉本興業も相当なダメージを受けるだろう。また事実でない場合は、週刊文春の信頼が失墜して、社会的責任を問われる事態になるだろう。本ブログは個人的なものだが、推測で意見を記述することはできない。またしてはいけないものと考える。私が危惧するのは、根拠のない評論が巷に溢れていることだ。直近ではコメンテーターの罵り合いも見受けられる。意見を言うのは自由かもしれないが、自分だけが正しいという評論には辟易する。仮に裁判となれば、当事者の人生が左右されるのだ。言ったもん勝ちのような風潮には賛同できない。視点がある評論ならば積極的に拝見するが、タイトルだけのお気軽解説動画は興味もない。もし事実と異なっていたら、発信者は責任を取る覚悟があるのだろうか。

過去に私もマスメディアの広報業務に携わっていた時代がある。その際はスポンサーと放送局の関係を徹底的に学んだ。テレビにせよラジオにせよ、番組はスポンサーにより成り立っている。この力関係を図式で示すと以下のようになる。スポンサー企業>広告代理店>放送局営業部>番組プロデューサー>芸能人・タレント 松本さんは一番最後のポジションになる。たとえ人気絶大の超大物であっても、一タレントが「番組に出まーす」などと軽々に発言できないのが実情だ。松本さんは昨年三月まで「ワイドナショー」へ出演していたのは事実。そして自ら降板を申し出た。かつて出演していた番組とはいえ、許可をとらないままの投稿は番組関係者の不信を買ったはずだ。

率直にいえば、松本さんはワイドナショーの立役者という自負があるのかもしれない。これについて私も異論はない。従って同番組に出演して見解を語れば、自分の主張が正しいと理解してもらえるのではないかという計算が働いたのかもしれない。だが残念ながら、この計算は間違っている。放送局は許認可事業。従って電波は公共の財産という位置付けになる。双方の主張が対峙する問題を報じる場合は、公平中立で客観的な姿勢が不可欠にある。かつて松本さんが出演していた番組とはいえ、松本さんの主張だけでは不公平になる。また番組のスポンサーが松本さんを支持していると受け取られかねない。そうなるとスポンサーが降りる可能性も出てくる。フジテレビもこれだけは避けたいと判断して出演不可に至ったのだろう。

松本さんは天才的な発想による、独特の世界観を創造するプロフェッショナルである。笑いをクリエイトする企画力に加えて、スケッチやイラストなどもプロ級に上手い。但し以前から気になっていた部分もある。かつてフジテレビで放送されていたダウンタウンの「ごっつええ感じ」という番組が存在したが、秋の二時間スペシャルの放送を巡ってダウンタウンとフジテレビの間でトラブルが生じた。放送当日はプロ野球ヤクルトスワローズの優勝決定試合が行われていた。だがフジテレビはダウンタウンの了承を得ないまま、プロ野球中継に差し替えたのだ。私もリアルタイムで視聴していたので、この時は大変驚いた。この事実を知ったダウンタウンは激怒して番組の降板を表明。そのまま終了してしまった。ヤクルトスワローズはフジ・サンケイグループだ。従って試合の中継は必然ともいえるが、ダウンタウンの了承を得ないままの差し替えは、フジテレビにも非があるといえよう。言葉足らずは誤解と不信感を招く。この時は番組終了で決着したが、今回は当事者の人生を左右する。結果はどうあれ、冷静な対応を願うばかりだ。

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