もぬけの殻

2024年7月28日

出かけようとしたところ、ツバメの巣を見つけた。場所は駐輪場の外壁上方、人目が届かない位置に作られていた。ツバメの巣がある家は、幸運が訪れるといわれている。

ツバメは外敵から身を守るため、人のそばで巣を作る習性がある。適度に人の出入りがあり、湿気が少ない爽やかな環境。そして巣を壊さない優しい人が暮らす家を選ぶという。改めて考えると殆どが当たっている。駐輪場は道路に面しているので極めて風通しが良い。またうちのマンションは、静かに暮らす方が多い。子供が泣き喚いたり、馬鹿騒ぎをする輩もいない。唯一異なるのは集合住宅ということである。ツバメにとって居心地が良い場所かもしれない。北側には川があるため、巣作りの材料や食べ物が見つけやすいこともある。親ツバメが飛び交う様子を見ると、まもなく夏がやってくるという気持ちになる。上の画像を撮影した時は親が飛び交っていたのだが、先程見たらもぬけの殻だった。いつのまにかヒナが巣立ちしたようだ。

ツバメは旅立ってしまったが、私たちがこのマンションで暮らすのもあと半年ほどになった。秋ごろには懐かしい実家へ移り住むことになる。この街で知り合った人やお店など、数々の思い出が愛おしくなるだろう。本記事を書いている現在は朝の4時半ごろ。鳥の囀りが聞こえている。昨今は鳥の囀りで大凡の時間が分かるようになった。ブログを書き終えて、朝ごはんに何を食べようかと思いを巡らせるのは楽しい。果汁100%のオレンジジュースにポテトサラダが挟まれたロールパン。そしてバナナを1本頂くとするか。朝食を済ませたら、柔軟体操と散歩が待っている。身体に力がみなぎる朝のひとときは、生きる喜びを感じられる大切な時間になっている。昨今は身体の劣化が著しく、同時に気力も失せつつある。だがここで負けるわけにはいかない。まだまだやるべきことが沢山ある。若さを維持する秘訣は他人に会うこと。知り合いでなくても構わない。他人に見られている感覚と気持ちが大切なのだ。

グラフィックデザイナーを志して上京した頃は不健康の極み。タバコを一日60本ほど吸っていた。働き過ぎた六年間の東京生活。にも関わらず一度も医者にかからずは奇跡的といえよう。だがその時代は、既に忘却の彼方になった。今はストレスをかけない生活の尊さが分かっている。何気ない一瞬に季節の移ろいを感じながら、生きる喜びを噛み締めている。出会った人々に感謝を込めて、じゃあまたねと言葉を交わす喜び。この歳になり、ようやく人付き合いのコツが分かってきた。人は感情があるため、常に相手の立場で物事を考えるのは難しい。自分の気持ちを優先したいのは誰もが同じ。これに待ったをかけるようになったのは60歳を超えてからだ。自分よりも相手の気持ちを理解しようと考えるようになった。何事もこれが当たり前だと考えた瞬間から、人は次第に傲慢になっていく。

来月は私の母が88歳を迎える。母は2006年にがんが発覚。術後十年を経過して主治医から完治を伝えられた。ほぼ同時期にがんが発覚した父は手の施しようがないまま亡くなった。父を失って以降は、辛い日々を過ごしたに違いない。母は大阪生まれ。持ち前の度胸がある反面、もろい部分もある。父の葬儀を行った日のことだった。私はこの先を考えて気落ちしていた。お坊さんが私を気遣い、話しをしてくださった。その後帰宅して母がこう言った。「あんた、お坊さんの話は理解できた?」私が大凡の意味は分かるよと答えると「ウソ〜!私はこの人が何を言いたいのか全然分からへんかったで」こんな母です。

family story,In My Life