受信料を払っても見る価値が有る? 今までの人生観が変わるかも。 NHKEテレ、オトナの一休さん。
2021年1月2日CULTURE
とんち話の一休さん。子供向けアニメとして知らない人はいないと言って良いほどの人気番組だった。放送当時、ボクの妹が毎回見ていた事もあり、つられて見ていた記憶もある。意地悪な将軍様を懲らしめる為に、さよちゃんや新右衛門さん、仲間の小坊主らと協力して問題を解決していく名作アニメだった。時は変わって現代。NHKEテレ。所謂教育テレビ。普段殆ど見ないこのチャンネルにも大人の鑑賞に耐えうる魅力的な番組がある事を発見した。オトナの一休さん。初回の放送を見て以来、その独特な雰囲気に引き込まれて最終回まで見てしまった。ボクが夢中になって最終回まで見たNHKの番組はそうそう無い。この番組、一休さんの物語だが、誰もが知っているとんちの一休さんでは無い。とんちを使って悪者を懲らしめる一休さんはフィクションなのだ。エーッ!と思った人もいるだろう。かく言うボクもその1人だった。ではオトナの一休さんとはどんな番組かと言うと、史実に基づき製作された禅宗の高僧である一休宗純を描いた物語。画像を見て「なんだ、アニメかよ。」と思ったそこのアナタ。騙されてと思って一度見てご覧なさい。オトナの一休さんは小坊主の一休さんとは真逆と言って良い内容なのだ。修行する身でありながら田舎暮らしを嫌い、女郎屋に出掛けては女性を抱く。兄弟子を小馬鹿にするわ。修行中の弟子たちが集まっている隣の部屋でも女性を抱いてしまうトンデモナイ破壊僧。挙げ句の果てにはカラオケで自分の歌まで歌ってしまう滅茶苦茶な番組なのだ。しかしコレが実に面白い。一休と兄弟子の養叟宗頤(ようそうそうい)、蜷川新右衛門の3人が繰り広げる展開は、まるでコントや漫才を見ている様な感覚になり思わず笑ってしまう。社会の常識や慣習を逆手に取り、時にユーモアやお色気を交えながら人生の機微を語ってくれるこの番組はオトナのエンターテイメントと言って良い。常識に囚われた固い頭の現代人に喝を入れてくれるオトナの一休さんは大人の為の童話であり、NHKらしからぬ新感覚な番組作りを実践している。本番組最大の特長は、現代の文化や諸問題をさりげなく取り込み人生を諭しているところだ。人はどんな身分であっても平等である事。万物は移ろい変わるもの。人生は無情で儚い。だからこそ人は命が消える日まで懸命に生きなさい!と教えてくれる。またこの番組を見て初めて知ったこともある。一休さんは過去に入水自殺を図っている事。禅宗から浄土真宗に改宗している事だ。この2点はとても興味深い話だ。第18則では兄弟子と大喧嘩して絶交。そして次の19則では兄弟子が病気で亡くなってしまう。この回は2人の兄弟愛を描いたもので涙無くしては見られない。兄弟子が亡くなる直前、寺の外でお経を上げていた一休さんから一筋の涙が流れ落ちる。毎回兄弟子を罵倒しながら、誰よりも兄弟子を愛していたのが一休ではなかったか。また、応仁の乱を引き起こした足利義政を批判し、貴様らの時代は大丈夫か?と我々に問うてくる。その後77歳にして27歳の若い女性と恋に落ち同棲。この噂を聞きつけた弟子の名が文春と言うのもシャレが効いており笑わせてくれる。オトナの一休さんが、ボクの愛すべき永久保存番組になったのはいうまでも無い。
一休宗純の声は吉本興業所属のお笑いコンビ、130Rの板尾創路が担当。最近のNHKは「チコちゃんに叱られる!」では同社の木村祐一を起用するなど、幅広いジャンルから人材を活用している。秀逸なアニメーションに加えてバックに流れる音楽も味わいがありこの作品を際立ったものにしている。
「オトナの一休さん」テーマソング
https://www.youtube.com/watch?v=wEaYa1DPeJA
諸行無常。諸法無我。
人生は無情だ。実態が無く、儚いものだから良いのだ。
日本人は都合の良い時だけ信仰を持つ民族。そして殆どが無宗教である。以前何かのテレビ番組で見た記憶があるのだが、日本人ほど自分に都合良く信仰心を持つ民族はいないそうだ。確かに一理ある。どんな人でも願い事を叶えたい時は願掛けに行くし、新年には初詣に出かける。生前の父に聞いた話だが、ボクが子供の頃、坊さんが法要で家に来た際には、一緒にお経を唱えて丸暗記していたそうである。んなワケ無いだろ?幼少期とは言え、無宗教のボクがそんなことするワケ無いと思うのだが、後に母から聞いた話ではどうやらホントらしい。しかしである。無宗教のボクでも近年墓参りに行くのが当たり前になったのは多少なりとも信仰心があるからかもしれない。今の自分があるのはご先祖のおかげだ。だからこそご先祖に感謝して生きる。そして生きる役目を探すのが修行=人生なのだ。短い人生は一度きりだから価値がある。死んだらそれで終わり。死後の世界などあるはずが無い。ご先祖様がしっかりと生きてくれたからこそ自分がこの世に生まれてきたのだ。だからこそ命ある限り日々一生懸命生きるべきだと言う教えには、無宗教の自分でさえも納得してしまう。この番組を見たおかげでボクも人生観が変わったかもしれない。悔いのない様に毎日を一生懸命生きる。誰でもそれが分かっていながら簡単にできないのが人生なのだ。来年60歳を迎える初老の自分に何が出来るのか。考えたら少しワクワクしてきた。この先例えジジイと呼ばれる様になってもできるかぎり生きる。人生は無情。そして実態が無く儚いものだから良いのだと、一休さんは語っている。残念ながら番組の本放送は既に終了しているが、本年初頭に全26則をまとめて再放送された。オトナの一休さん。人生に喝を入れてくれる目からウロコの番組だ。今後再放送の予告があれば本ブログで再び紹介したい。
「オトナの一休さん」第14則
https://www.youtube.com/watch?v=_mmYzyEq1hE
2021年1月2日CULTURE