17 minutes of LOVETOKYO LIFE STORY❺
2020年10月6日TOKYO LIFE STORY
東京に住んでいた8年間、名古屋へ帰省する時は新幹線を利用していた。春と夏の年2回=16回。これだけの回数を乗ると、時には信じられないような事も起きる。デザイン専門学校の1年目の冬、名古屋から東京に戻る際、左隣の席に座っていた女性から声をかけられた、「ライターを借りてもいいいですか」どうぞと答えて彼女の身なりをチラリと見た。若いOL風。黒のジャケットにグレーのタイトスカート。細いヒールの靴を履いていた。
彼女は私が使っていたウオークマンに興味を持ったようだった。その時、私が使っていたウオークマンはSONYのWM-7、フェザータッチオペレーションで、オートリバースを装備したものだった。こんなの初めて見ました。珍しいウオークマンですねと言って話を続けてきた。その後、彼女も洋楽志向と分かり意気投合。音楽談義に花が咲き、数分過ごした。窓の外に目を向けると新横浜駅を通過していた。17分ほどで東京駅に到着とアナウンスがあった。あ~またこれから孤独な生活が始まるのかと思っていた矢先、彼女が呟いた。「来週もう一度会いませんか」この人は冗談を言ってるのかなと思ったので改めて聞いてみた。「どうしました?」次ははっきりと聞こえた。「もう一度会いませんか?」「オレと?」「ハイ」「オレでよければ喜んで」その時は奇特な人がいるものだと思った。その場で彼女から聞いた住所をメモした。新幹線が東京駅のホームに滑り込んだ後、「じゃあ来週」と言って別れた。翌週の日曜日、メモを元に彼女の住むマンションを訪ねた。私鉄駅近くの高級マンションだった。インターホンを押して待つこと数秒、ドアが開いて彼女が目の前に現れた。
その時の彼女は新幹線の中で見たときよりも可愛く感じた。互いに平静を装っていたが、私は少し動揺していた。どうぞ上がって下さいと言われた彼女の部屋は、女性らしい柔らかいトーンでまとめられたいた。その日は二人で食事に出かけようかと思っていたが、彼女が夕ご飯を作るからと言われて取りやめた。私の目の前で作ってくれたものはオムライスとサラダだった。オムライスにはケチャップを使って、お互いの名前も書かれていた。嬉しくもあり、恥ずかしくもありの気持ちだった。その日は互いの生活について夜遅くまで話した。彼女はOLでは無く女子大生だった。◯◯は料理上手だし、服のセンスも良いねと言ったらはにかんだ。その時の表情も良かった。あれもこれも話したいと、瞬く間に時間は過ぎ、壁の時計に目をやると23時を回っていた。これはまずいと感じて帰り支度を始めた時、「今日はもう遅いから泊まっていけば」と言われた。独身女性の家に泊まるなどできるはずもない。その場は帰るよと言ったのだが、彼女の説得に負けて甘えてしまった。彼女は自分のベッド、私は部屋の床で一泊した。翌日の昼も、彼女がご飯を作ってくれて一緒に食べた。後ろ髪を引かれる想いだったが、また会おうと言って自分のアパートに帰った。あの時の自分は心底彼女を好きになっていた。
それから数週間後の夜、私の部屋をノックする音がした。ドアを開けて驚いた。彼女がいたのだ。「どうしたの?」「ごめんね、来ちゃった」彼女のマンションに泊まった際、彼氏がいる事は聞いていたのでピンと来た。「喧嘩でもしたか」彼女は無言だった。おそらく図星だったのだろう。その後近くの喫茶店で数時間話した。「今日泊まってもいい?」私は少し間を置いて答えた。「今夜は帰りな、家まで送るから」二人で私のアパート近くの駅まで歩いた。いつのまにか自然に手を繋いでいた。「ありがとね、ここでいいから」自分も電車に乗ろうかと思ったが思いとどまった。一時の気持ちで心を寄せ合うこともできたが、自分で自分を戒めた。恐らくお互いの為にはならないと感じたのだろう。
彼女を見送った後、アパートに着くまでの間自問自答した。本当にこれでよかったのか。
いや、これで良かったのだと割り切った。一時的な気持ちに流れる事なく、彼女の心を大切にしたのだから。その後彼女の事を気にはしていたが、再び彼女と会う事は無かった。今思えばあの時の複雑な気持ちは何だったのだろう。私の推測はこうだ。彼女と新幹線の中で出会った時、彼氏とケンカしたていたのではないかと。その後私と彼女は恋心を感じていたものの、一時的な寂しさで私を部屋に招いたのではないかと。あの時から40年経った。今となっては真相は分からない。でも積極的な彼女のことだ。今も東京のどこかで元気に暮らしているだろう。僅か17分が作ってくれた奇跡の出会い。ドラマみたいなことが起きるんだよ、東京は。
☆Coming Up/Paul McCartney
40年前の曲だが今聴いても魅力的な曲である。
テクノサウンドを取り入れた斬新な楽曲で、メロディーラインも力強い。
ポール自身もお気に入りで、過去に何度もライブで演奏している。
また、ジョン・レノンが音楽活動を再開するきっかけになった曲と言われており、
この曲を大変評価している。レコーディングは自宅スタジオでポールひとりで行った。
ビデオクリップはポールが一人10役、リンダ夫人も一人2役を演じている。
https://www.youtube.com/watch?v=0d_Wv-gkHts
☆ Coming Up/Paul McCartney(2009 LIVE)
ニューヨークにある、エド・サリヴァンシアターの屋根の上で行ったライブ。
ノリノリの観客。テンポアップしたタイトな演奏がめちゃくちゃカッコいい。
映画レット・イット・ビーの屋上ライヴを彷彿させる。
https://www.youtube.com/watch?v=D1kpfniGlxs
2020年10月6日TOKYO LIFE STORY